胃炎

胃の粘膜から分泌される胃液には胃酸と胃粘液が含まれます。
胃酸は強い酸性を持ち、細菌の殺菌作用や食物の消化・分解作用があります。
胃粘液は胃酸や外部から取り込まれた傷害物質による粘膜の損傷を防ぐ働きがあります。
胃自身にとって攻撃因子となる胃酸や外部からの傷害物質、胃自身を守る防御因子となる胃粘液が存在しています。そのバランスが乱れ、防御因子が弱まると胃粘膜が障害を受けやすくなります。ストレス アルコール 痛み止めなどにより急性胃炎がおこり、ヘリコバクターピロリ菌により慢性胃炎がおこり、胃の粘膜障害を受けます。粘膜障害を受けると、粘膜に炎症(ただれ)がおこり、びらんを認め、進行すると胃酸が直接粘膜にふれて潰瘍をおこします。

 

症状として
急性胃炎は特に典型的な症状はありませんが、上腹部痛が急に起こり、嘔気・嘔吐を認めます。その他、胃もたれ、胃部不快感、腹部膨満感、食欲低下など症状は多彩です。時には吐血や下血もあります。
慢性胃炎は必ずしも症状があるわけではなく、上腹部痛、胃もたれ、胃部不快感、腹部膨満感などがあります。

原因
急性胃炎ではストレス、アルコール、鎮痛剤、感染症などがあります。
慢性胃炎ではほとんどがヘリコバクター・ピロリ菌です。
ピロリ菌は乳幼児期に感染し、それ以降の感染は少ないといわれています。ピロリ菌に感染している人から食べ物の口移しや不衛生な水を飲むことにより感染します。日本は乳幼児の衛生環境や上下水道の整備によりピロリ菌の感染率は減少しています。感染率は20代では10~20%、 60代では50~60%ぐらいといわれており、若い世代は少ないですが、団塊の世代ではまだ感染率は高い傾向です。また、ピロリ菌がいるかどうか調べるには保険上、胃カメラの検査後でないと調べることはできません。

●診断
胃カメラにて確認していきます。
急性胃炎は出血、びらん、潰瘍などが混在していることが多いです。
慢性胃炎は萎縮度の広がりを確認し、ヘリコバクター・ピロリ菌の有無を調べます。
慢性胃炎は萎縮性胃炎とほぼ同じことを意味している病気で、胃の粘膜が長期間にわたり、炎症をおこしていると、胃の粘膜がうすくなる状態を言います。それが進行すると腸の粘膜のようになる腸上皮化生となり、胃がんになる危険性が高くなります。
進行を予防するために慢性胃炎は早期に治療していく必要があり、早期での胃カメラは必要となります。

●治療方法
急性胃炎は原因となるものを除去することや生活習慣を変えることです。
薬物療法として酸分泌抑制薬を使用します。出血がある場合は内視鏡にて止血術が必要になっていきます。
慢性胃炎はピロリ菌に感染している場合、進行を防いだり症状を緩和するためには除菌治療が必要です。除菌治療は抗生物質2種類と胃酸分泌を減らす酸分泌抑制薬を1週間内服してもらいます。100%除菌成功するとは限らず、内服終了後1~2か月後に除菌ができたかどうかの検査をします。その検査で失敗した場合でも抗生物質の種類をかえて、2回目の除菌が可能です。

ピロリ菌除菌をすれば胃がんの発症を完全ではありませんが、1/3ぐらいは減らすことが可能であると報告されております。
ピロリ菌除菌後は炎症の進行は抑えることはできますが慢性胃炎は残存しているので、除菌されても一定の割合で胃がんの発生が認められます。除菌後も胃がんの危険性が継続するため、定期的に胃カメラの検査をすることが必要です。