ピロリ菌

ヘリコバクター・ピロリ菌はらせん型をしたグラム陰性桿菌で胃の粘膜に生息しています。ピロリ菌は免疫力の弱い時期である5歳までの乳幼児期に感染し、それ以降の感染は少ないといわれています。口を介した感染(ピロリ菌に感染している人から食べ物の口移しなど)や不衛生な水を飲むことにより感染します。日本は乳幼児の衛生環境や上下水道の整備によりピロリ菌の感染率は減少しています。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染症に対する保険適応疾患は胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡治療後でしたが、2013年2月にヘリコバクターピロリ感染胃炎が保険適応疾患となりました。
それに伴い、ピロリ菌除菌者は急激に増加し、日本の若年者での感染者を年々減少している傾向です。現在の感染率は20代では10%以下、 60代では50~60%ぐらいといわれております。(1990年ぐらいまでは20代の感染率は50%以上でした)
ピロリ菌が胃の中に住み着くと菌の出す毒素で粘膜が壊され、炎症がおこり慢性胃炎になります。こうした炎症を繰り返すと、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんが起こりやすくなります。

 

ピロリ菌検査
・胃カメラで採取した胃の組織を調べる方法
迅速ウレアーゼ検査 顕微鏡で調べる鏡検法 培養法
・胃カメラを用いない方法
血液や尿を用いた抗体法 便を用いた抗原法 尿素呼気試験 があります。

※ピロリ菌検査は胃カメラをして慢性胃炎と診断をされた方しか保険診療でできません。ピロリ菌検査のみの希望の場合は自費になります。
※胃カメラをして6か月以内まではピロリ菌検査は可能です。
他施設で胃カメラをしていてもピロリ菌検査はどこの医療機関でも可能です。

ピロリ菌除菌
除菌治療には菌を死滅させるための抗菌薬2種類とそれを補助する酸分泌抑制薬1種類を朝・夕食後に1週間内服となります。除菌は必ずしも100%成功するとは限らず、内服終了後1~2か月後以降にピロリ菌除菌が成功したかどうかの検査(尿素呼気試験)をしてもらいます。その検査で失敗した場合は抗菌薬を変更して、2回目の除菌治療をすることができます。
また、副作用には下痢(約20~30%)、味覚障害(約5~15%)、湿疹(約2~5%)、肝機能障害(約1~5%)があります。発熱・腹痛を伴う下痢、血便、アレルギー症状である息苦しさやじんましんを認めることが稀に認めることがあります。その際、服用は直ちに中止して御連絡ください。

ピロリ菌除菌により炎症の進行は抑えることはでき、胃炎の進行予防・潰瘍の再発予防や新しい胃がんが発生する確率を減らすことができます。しかし、慢性胃炎は残存しているので、除菌されても一定の割合で胃がんの発生が認められます。除菌後も胃がんの危険性が継続するため、定期的に胃カメラの検査をすることが必要です。